スピンの測定あれこれ

量子力学の世界では、観測が異なれば、その度に異なる観測結果が出ます。また、同じ観測なら同じ観測結果がでます。むむむ、観測が同じってことがあるのかな?って思っていたのが、少しスッキリした話があったので、紹介します。

電子スピンの観測

①垂直方向に対する観測を行い、上むきのスピンが観測された電子の状態を ↑ とします。

② ↑ となった電子に対して全く同じ垂直方向の観測を行うと、もう一度 ↑ が観測されます。

③次に ↑ の状態の電子に対して、垂直方向の観測を行うと、左右どちらかの方向のスピンが1/2の確率で観測されます。この時左方向に観測された状態の電子を  ← とします。

④今度は ← の状態の電子に対して、再度垂直方向の観測を行うと、②と同様の観測を行います。すると今度は上向きと下向きのスピンが1/2の確率で観測されるようになります。

量子論での「観測」については理系の大学生でもつまづくポイントなので、馴染みのない人にとってみるとイメージしにくいですよね。。

量子の観測について説明している動画を貼っておきますので理解の助けに使ってください。

電子スピンの数学

量子系の測定モデルはベクトル空間で与えられます。1電子のスピンの場合2つの結果が得られる為、2次元の空間となります。この空間の正規直交基底をb1 b2 とすると観測するする前のスピン状態はその基底の線形結合で表されます。

c1*b1 + c2*b2

これを状態ベクトル、または単に状態と呼びます。

スピン上向の状態を基底ベクトルb1 スピン下向の状態を基底ベクトルb2と対応させた時、c1とc2はそれぞれのスピンが観測される確率振幅になります。

スピン上向の状態b1に対してそれより少し傾いた角度αで観測を行なったとします。

簡単のために基底b1 b2をそれぞれ(1,0) (0,1)とすると、それより少し傾いた状態の基底をb'1 b'2はそれぞれ(cos(α),-sin(α)) (sin(α),cos(α))となる。

上向スピンが観測された状態はb1なので、少し傾いた観測は次のように表現できます。

b1 = c'1*b'1 + c'2*b'2

条件から、c'1=cos(α) c'2=-sin(α)となります。

αが十分に小さければ、スピン上向が再度観測される確率は十分1に近くなりますね。また基底にかかっている係数は確率振幅なのでその状態が現れる確率はその2乗になりますからマイナスがついているからと言って確率がマイナスになることはありません。

厳密に正確に同じ観測っていうのは不可能だと思うのですが、ほぼ同じ観測なら、同じ観測結果が出る確率は限りなく1に近くなりそうですね。非常に低い確率ではありますが、反対側のスピンが観測されることもあるところが、私たちの想像を超えていて面白いとこですね!

ではまた。

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